ここでは、勉強を始めるにあたってそれぞれの課題で最小限必要な道具について説明しています。
1)鉛筆、カッターナイフ
市販されている鉛筆には10H~10B、BB、EBなどの種類がありますが、当アートスクールではまず最初に最低限2H~6Bまでの10種類の鉛筆を揃えるよう勧めています。(当教室で最初に鉛筆のセットを購入された場合、セットには4H〜8Bの14種類の鉛筆が入っています。)
2H~6Bまでの10種類の鉛筆はそれぞれ硬さや色合い、書き心地などが異なっていて、それらを駆使しながら一枚のデッサンを仕上げていきます。まずはそれぞれの鉛筆の特徴を知るためにも満遍なく使ってみて下さい。慣れてくると、デッサンを描くプロセスの中で次にほしい鉛筆に自然と手が伸びるようになって来ます。
これら10種類の鉛筆に慣れてきたら、必要に応じてより黒い色の出る鉛筆や硬い鉛筆などを買い足すといいと思います。ただ、BB、EBは黒の色のニュアンスが10H~10Bとはかなり異なるため、一枚のデッサンの中で併用するとトーンの統一感が出ません。BB、EBはクロッキー、スケッチ、それのみでのデッサンの際に使いましょう。
鉛筆は必ず、カッターナイフで「デッサンに適した」形状になるように削るようにして下さい。(カッターナイフについてはこのページに最後に少し説明を追加しています。)
また、鉛筆は同じ種類のもの何本かをあらかじめ削った上で輪ゴムで縛り、同じ種類の鉛筆の束を作っておくと、デッサン中に鉛筆を削ったり芯の尖った鉛筆を探す時間が短縮できて便利です。短くなって来たら鉛筆ホルダーをつけて最後まで使いましょう。
鉛筆にはステドラーやカステルなどいくつかのメーカーがあり、それぞれ特色がありますが、当アートスクールでは中でも品質(描き心地、発色のバランス、扱い易さなど)が高く、輸入品に比べて安価で、手に入りやすいという理由から三菱Hi-UNIを取り扱っています。
2)消しゴム、練りゴム
鉛筆デッサンでは、「プラスチック消しゴム」と「練りゴム」の2種類の消し具を使います。どちらも消し具ではあるのですが、使い道が全く異なるものです。原則として、「プラスチック消しゴム」は描いた形の修正や画面の汚れなどを「きれいに消す」ために使います。「練りゴム」はその柔らかさや可塑性を利用して、トーンを作るためや、ハイライトを抜いたり形の細部を作り込んだりするために使うもので、いずれにせよ、消すというよりも「描く」ための道具です。(場合によっては、消しゴムの角でハイライトを抜いたり、練りゴムで細部の汚れを消したり、などの例外もあります。)この2種類の消し具をうまく使い分けて行くことがデッサンを綺麗に仕上げる上での大きなポイントです。
特殊なものとしてはペン状の消しゴムやカドケシなどもあります。これらは細かいハイライトやロゴの白抜き文字などを整えていくときなどに便利です。
3)羽根ぼうき、またはダスティングブラシ
どちらも消しゴムのカスを画面から払い落とすために使います。羽根ぼうきは使っているうちに羽根の先端がボロボロになりやすいという理由で、当アートスクールではダスティングブラシを取り扱っています。ただ一部の大学では羽根ぼうきを使用道具に指定しているところもあります。
4)デッサンスケール、計り棒
通称「デスケル」。モチーフの配置やそれらが画面の枠にどのように収まっているのか、モチーフ同士の大きさのバランスやプロポーションを確認するために使います。受験会場では使用不可の場合が多いのですが(一部の大学では使用できるところもあります)、当アートスクールでの練習段階では構成感覚を養うために積極的に使ってもらっています。
計り棒はモチーフ同士の大きさのバランスやプロポーションを確認するために使いますが、これも受験会場では使用不可の場合が多いので、木炭デッサンや大型静物を描くとき以外は長めの鉛筆で代用しています。
5)カルトン、クリップ
カルトンは厚紙製の画板です。厚紙が2枚合わさっているもの(ダブル)と1枚もの(シングル)があります。ダブルのものは作品を挟んで持ち運ぶときにも使いますし、裏返した面を立体制作などの際のカッターマットがわりにも使います。大きさは、四つ切りサイズのものと木炭紙大サイズのものがありますが、木炭デッサンや大型の静物を描く必要がなければ四つ切りサイズのものを使って下さい。(木炭紙大サイズが必要な場合は、教室にあるカルトンをお貸しできます。)
クリップはカルトンに画用紙を固定する際に使います。
6)筆箱
カルトン、クリップ以外の上記のデッサンの道具を収めるために使います。布製のペンケースは衝撃で鉛筆の芯が折れやすく収納性も悪いのでやめましょう。自宅に金属製の菓子箱があればそれが使えるかもしれません。なければ、ホームセンターや100円ショップなどで手頃な大きさのプラスチック製のツールボックス(道具箱)を探してみて下さい。デッサンを続けて行くうちに鉛筆の量が増えてくるので、少し大きめのものを買った方がいいと思います。鉛筆の芯が当たるところに発泡スチロールやウレタンのクッションを取り付けておくなどの工夫も忘れずに。
1)不透明水彩絵の具
ポスターカラー、ガッシュ、デザイナーズカラー、アクリルガッシュなどが不透明水彩です。ベタ塗りの色彩構成から、にじみ・ぼかし・(多少の)厚塗りを活かした絵画的な表現まで、幅広く使えます。ベタ塗りの際にムラなくキレイに塗るには水加減や筆遣いなどに慣れが必要です。
まずは12〜18色のセットから始め、混色によって様々な色を作る練習をして下さい。(当アートスクールでは18色のセットを扱っています。)練習を続けていくうちに、混色によっては作れない色が必要になってくることもありますから、その都度色を増やしていけばいいと思います。
2)筆
筆は、大きさ、先の形状、材質など様々な種類があって、どのように揃えればいいか迷うと思います。また、どんな絵を描くかによっても選択肢が変わってくる場合があります。筆を選ぶ際のポイントとしては、毛にある程度のコシがあること、毛にまとまりがあること、絵の具の含みが良いことなどが挙げられます。それらの要件を満たすものとしてはコリンスキーなどの希少な動物の毛の筆が挙げられますが、大変高価で取り扱いにも注意が必要なのが難点です。
まずは幅広く受験の色彩構成に対応できそうな筆、そして比較的安価なものということで、リセーブルか、ナイロン製の丸筆と平筆を、細いものから中ぐらいのものまで数本づつ揃えて下さい。(当アートスクールで、標準的なサイズのものをセットとして組んで取り扱っています。)その上で必要に応じて違うサイズ・材質のものを買い足していくといいと思います。例えば、水気の多い絵の具を大きく伸ばして下塗りなどを施す際には、リスなどの柔らかい毛の太めの筆、日本画などで使う羊毛の平刷毛などが便利です。また細かい描き起こしなどには面相筆も必要になってきます。
(日本画科受験の透明水彩を使った着彩のための筆についても概ね同じことが言えますが、より描画に向いた様々な材質や形状の筆がありますので、必要に応じて試してみてください。)
3)パレット
絵の具を溶き混色するためのパレットには、プラスチック製のもの以外にも、紙パレット、プラスチックや陶器の丸皿や菊皿などがあります。これらは必要に応じて使い分けたり、併用していくといいと思います。写真のパレットは当アートスクールで扱っているものですが、ベタ塗りから絵画的な表現まで対応できる汎用性があると思います。持ち運び易いという理由で比較的小ぶりのものを扱っていますが、これを2枚くらい用意しておけば1課題の中で(途中で水洗いしなくても)ある程度間に合うのではないかと思います。
(日本画科受験の透明水彩を使った着彩写生のためのパレットは、上記のプラスチック製のものではなく、ホーローやアルミニウム製の二つ折りにできるタイプのものがいいです。絵の具を出しておく仕切りに絵の具をあらかじめ詰めて乾かしておき、それを少しずつ溶かしながら使います。ホーローのものはしっかりした強度があっていいのですが、重く、また高価なので、一般的にはアルミニウム製のものの方がいいと思います。必要な大きさや絵の具の仕切りの数を確認して買うようにしましょう。)
4)筆洗、水差し
筆洗は、机の上で倒れたりしないよう安定感があって、何回も水を換えにいく必要のない大きさのものがいいと思います。筆洗は持ち運びの際かさばるので、普段は教室に常備してあるものを使ってもらっています。
水差しは、筆洗の濁った水で絵の具を溶かないように、別に用意しておきましょう。ホームセンターや100円ショップなどで簡単に手に入ります。
5)配色カード
配色カードは、主にベーシックな色彩構成の練習の際に使います。配色の計画を自分の頭の中だけや、行き当たりばったりにやろうとするのではなく、ある色に対してどんな色を配置すればきれいに響くか、実際にカードから選んで合わせてみることで見当がつけやすくなります。また、カードを使って色を決めていく際にこれまで自分のイメージの中になかった色が合う場合があり、そのカードの色に合わせて混色していくことで、自分の色彩感覚の幅を広げていくことにつながります。
配色カードは、トーンごとにまとまりを持って並べられており、その仕組みを理解しながら使うことによって色彩の理論的な理解も深まります。
写真の配色カードは199色のカードをまとめた既成のものですが、さらに自分だけの配色カードを自作してもいいでしょう。単語カードなどに、絵の具の混合比を変えたものを塗ってまとめます。印刷された配色カードのトーンの幅に収まり切らない微妙なニュアンスの色調を作りながら、色彩に対する理解をさらに深めてみて下さい。
配色カードは受験会場では使えませんが、色彩感覚を育てる上で有効なので練習段階では積極的に使って下さい。
6)クロッキー帳
クロッキー帳は色彩においては、主にアイディアを考えたり構図を練ったりするために使いますが、それ以外にも普段思いついたアイディアを描き留めておいたり、試し塗りをしたり、ちょっとしたスケッチをしたり、講評の際の批評を記録しておいたりと多目的に使います。(もちろんクロッキーの際にも。)結果として課題作品を制作する試行錯誤の軌跡が記録されるもので、提出される作品と同等、あるいはそれ以上に重要な価値を持ちます。クロッキー帳と友達になって、クロッキー帳の上で手を動かしながらいろんなことを考えてみて下さい。
大判のものからメモ帳くらいのものまで幅広いサイズがありますが、色々な用途に使え、かつ持ち運びに便利な大きさを考えるとB4〜A3程度のものがいいのではないかと思います。
7)雑巾、ティッシュペーパー
雑巾やティシュペーパーは、筆洗で洗った筆の水を拭い取って乾かすためだけでなく、筆先の絵の具や水加減を微妙にコントロールするためなどにも使います。色彩の課題の際は忘れずに持参するようにして下さい。
8)直定規
色彩課題の際に画面に枠を取ったり、直線を使った画面構成をする際に直定規が必要になってきます。また、後述のガラス棒を使うときのために、溝が切ってあるものの方がいい場合があります。100円ショップのものは目盛りが不正確な場合もあるので、できれば製図用メーカーのしっかりした素材のものを買った方がいいでしょう。直定規は持ち運びがかさばるので、教室に常備してあるものをお貸しできます。また自分の定規を置いておける場所もあります。
9)烏口、ガラス棒
関東の美術系大学デザイン科の入試課題では、色面のエッジの処理やレタリング、絵の具の塗りなど、手描きでのデザインワークにおいて高い精度を要求する場合があります。烏口やガラス棒を使った溝引きは、色面のエッジをしっかりと区切ったり、均質なシャープな線を引いたりする際に用いますが、どちらも扱いには慣れが必要です。
10)透明水彩、色鉛筆、トーナルカラー
前述の不透明水彩を使った色彩課題以外にも、透明水彩、色鉛筆、トーナルカラー(色紙)などを使った課題の練習が必要な場合があります。(京都芸大は持参道具に透明水彩と色鉛筆が入っていますし、試験でトーナルカラーが配られたこともあります。京都精華大学グラフィックデザインは色紙を使った色彩構成の課題もあります。)
新たに透明水彩、色鉛筆を購入する時は、オススメのものでいくつか候補がありますので、当アートスクール講師にご相談ください。トーナルカラーは必要な課題の際に事務室で購入できます。
1)ハサミ
立体構成の課題は主に紙を使ったものになりますので、ハサミは大変重要な道具になります。切れ味、手に持った時の使いやすさなど、ハサミの性能が立体構成の工作精度に大きく関わりますのでなるべく良いものを購入しましょう。はみ出した紙の端を整えたりするための手芸用の小さなハサミもあると便利です。
2)接着剤
「木工用速乾」ボンドや「カネダイン」など紙用の接着剤を使って作業します。京都市立芸術大学を受験する人は「木工用速乾」が与えられそれしか使えない場合があるので、慣れておきましょう。
3)粘土へら
粘土ヘラは、柘植(つげ)など木製のもの、竹製、鉄製、プラスチック製などいろいろな材質のものがあり、先端の形状も様々なのでどれを買ったらいいのか迷うと思います。できれば柘植製のものを数種類と掻きベラを1本は買うようにしてください。
4)ラジオペンチ(刃付のもの)
針金などの金属が素材の場合にはラジオペンチが必要になって来ます。これもハサミと同様、作業性が工作精度に関わって来ますので、しっかりしたもの、使いやすい大きさのもの、刃の部分の切れ味の良いものを買うようにしてください。
5)マスキングテープ
接着剤を使って組み上げたパーツが乾燥するまでの間、仮止めのためにマスキングテープで固定しておきます。(教室で購入できます。)
1)カッターナイフ
カッターナイフは、デッサンで鉛筆を削る際に使いますが、それとは別に立体の課題の際にはもう少し大きなサイズのものがあったほうがいい場合があります。鉛筆を削るだけなら最も簡単に手に入る普通のサイズのものがいいのですが、立体でダンボール、スチレンボード、スタイロフォームなど、厚めの素材を切る時は普通サイズのものだと不安定できれいに切れないので、大きめのものも用意しておきましょう。(※立体制作時におけるカッターナイフの扱いにはくれぐれも注意してください。)
2)コンパス
色彩、立体の課題の際に使うことがあります。小ぶりのものは小さな円しか描けないし、安価なものは精度が悪く不安定なので、できれば金属製のしっかりしたもので、足を継ぎ足して大きな円が描けるものを用意したほうがいいと思います。
3)ポートフォリオ
作品を持ち運ぶために使います。色々なサイズや形状のものがありますが、ケース状になっていて持ち手がついているものが便利です。必要な大きさを確認して買うようにしましょう。
4)画用紙、ケント紙、水彩紙など
デッサン、色彩、立体などで使う用紙類は、普段は標準的なものを使って練習してもらっていますが、模試や入試前は各大学でよく使われているものや指定されているものを使って練習してもらいます。また、入試での急な紙質変更にも対応できるよう、時々は普段使っているものではない紙質の用紙で練習してもらうこともあります。
課題で使用する用紙類は当アートスクール事務室で購入できます。