イタリア美術紀行ーフィレンツェ編・その1(サン・マルコ美術館)

 

9月18日の夜、フィレンツェに「銀の矢」特急で移動。
翌19日、朝食後すぐに宿泊したホテルからサンマルコ美術館に直行。ここは1984年春に訪れて以来31年ぶりの再訪となります。とにかくフィレンツェに着いたら一番に行きたいところでした。
サンマルコ美術館はもと修道院で、内部には何十という僧房が並んでいます。そしてその僧房の一つ一つにフラ・アンジェリコのフレスコ画が描かれています。訪れた人はそれを観るために僧房を一つ一つ回ります。

僧房のある階に行くため階段を上がるとすぐに、有名な「受胎告知」が迎えてくれます。

 

 

本当に全部の僧房に、いろいろなキリストの生涯のエピソードを精緻な筆致で描いています。その量と集中力にまず感銘を受けます。そしてその色彩の柔らかさと透明感・・・。

 

 

自身も修道士であったフラ・アンジェリコにとって絵を描く事はなにより信仰の証であったでしょうし、描かれた僧房で過ごす修道士にとっても、その絵をよりどころにしながら大切に生活を共にしていたのではないかと思います。

 

 

一階の回廊や大きな部屋にもフレスコ画が描かれ、大きなテンペラによる祭壇画もあります。ここは本当にフラ・アンジェリコの作品で荘厳された(この言葉がふさわしいかどうかわかりませんが)場所です。
朝の、ひと気のない静かな僧房を巡りながらフラ・アンジェリコのタッチを見つめる素晴らしい時間を過ごすことができました。(Y.O)

 

 

(この文章は、松尾美術研究室のブログ "マツオ・アートログ”への2015年10月19日付けの投稿を転載したものです。)