イタリア美術紀行ーフィレンツェ編・その3(マリノ・マリーニ美術館)

 

9月20日朝、マリノ・マリーニ美術館に行きました。ここを訪れたのは初めてです。
古い教会跡を改装した美術館で、白い漆喰の壁に木の手すりなどが温かく調和し、4層になっている展示階に非常に有機的な関係性を持ってマリノ・マリーニの彫刻、絵、デッサンなど大小の作品たちが配置されています。

 

 

建物のディテールや窓、そしてそこから差し込む光までもが作品と呼応し、一つ一つの作品というよりも、空間との関係性そのものとしての美術館全体が何か、一つの物語を語りかけてくるかのようです。このような見事な配置の美術館は初めて見たような気がします。

 

 

この美術館を構成した人は誰なのでしょう? この美術館は1988年の開館で、マリーニ自身は‘80年に亡くなっていますから本人ではないはずなのですが、作家本人以外の人が構成したとはちょっと思えないような気持ちにさせられるほど、作品と展示空間が見事なまでに有機的に関係付けられているように思います。そんな私が感じた「関係性」を何とか写してみたいと思って写真をたくさん撮ってみたのですが、難しいですね。ここは、訪れる人が自身の目で新しい「関係性」を発見し、物語を紡ぐための開かれた空間なのでしょう。

 

 

空間が語りかけるユーモアやウイットに富んだ物語を楽しんでいるうちに3時間が経っていました。素晴らしい美術館でした。(Y.O)

 

(この文章は、松尾美術研究室のブログ "マツオ・アートログ”への2015年10月21日付けの投稿を転載したものです。)