生誕120周年記念 岸田劉生展 / 大阪市立美術館

 

大阪市立美術館で開催されている「岸田劉生展」に行ってきました。

油彩、水彩、デッサン、デザイン画、日本画など200点以上の作品によって、岸田劉生の生涯とその芸術をわかりやすく概観できるように構成されていて、非常に充実した展覧会だと思いました。出品作も、「切通之写生」と「麗子像」という2点の重文作品を中心として、肖像や静物などの比較的知られた作品は一通り網羅されており、普段美術の教科書や画集などの図版でしか見たことのない作品にも出会えます。(前後期で作品の入れ替えあり。)

岸田劉生は、白樺派との交流から後期印象派やフォービズムの影響下から本格的な制作を始め、しかしそれに飽きたらずに古典へと遡行し、ファン・アイクやデューラーなどの北方ルネッサンスの作品に酷似した写実的なスタイルへとたどり着きます。

 

 

「古屋君の肖像」や「麗子五歳之像」に見られるその精緻な写実は圧倒的です。しかし劉生はその即物的な描写のあり方をさらに展開し、「麗子像」や静物画にみられるような写実的であって単なる写実ではないような独特のスタイルを創始します。そのように画家としての思想=スタイルを確立してゆく1913年から1921年頃までの作品はどれも充実していて、こちらも画家の苦闘に負けないようにじっくりと見入ってしまいます。

 

 

僕自身そのほとんどが実作を見るのは初めての作品ばかりでしたが、その中でも、今まで図版でも見たことのない作品で、これはすごいなと思ったのは「支那服着たる妹照子之像」でした。これは「ゴヤかベラスケスじゃないの?」というくらいに達者な筆致の成熟した油絵で、図版の色がよくないんですが、本物は服のブルーがきれいで、背景も暗いながらも透明感があって非常に美しい絵なのです。

 

 

この絵に限らず、劉生の作品は微妙なトーンや色彩の扱いのセンスが非常に良くて、全体的に明るく見え、あまり古めかしい感じがしません。作品は小ぶりでも作品の骨格の有り様が明快で、離れて観てもスカッと見えてくるところが良いな、と思いました。

絵画を勉強している人は必見の展覧会だと思います。(Y.O.)

会期 平成23年9月17日(土)〜11月23日(水・祝)
休館日 月曜日(祝日の場合は開館し、翌火曜日)
9時30分〜17時(最終入館:16時30分)
観覧料  一般1,300円 (1,100円)
     高大生900円 (700円)

 

(この文章は、松尾美術研究室のブログ "マツオ・アートログ”への2011年10月15日付けの投稿を転載したものです。).