「世界のシェー!!」平沼正弘著(理論社・2010)
この本は、世界中で出会った人々に「シェー!!」のポーズをとってもらった写真を集めたものです。
アジア、アフリカ、オセアニア、ヨーロッパ、アメリカ・・・皆んなニコニコしながら「シェー!!」しています。
私はこんな壮大で大真面目なバカバカしさが大好きですが、同時に、それだけではなくてこの中には「何か」があるんじゃないだろうか? 何か「考えのタネ」になるようなものが見えてくるんじゃないか、と直感します。
「シェー!!」のポーズは日本人なら誰でも知っているでしょうが、外国の人はこのポーズのオリジナルを知らないわけです。きっとこのポーズの持つ滑稽さを自分なりに解釈しながらポーズをとり写真に収まっているのだと思います。
バレエや伝統舞踊のような優雅な「シェー!!」もあるし、不動明王のように力強い「シェー!!」もあります。他にもカチャーシーや阿波踊りみたいな「シェー!!」、酔っ払いの「シェー!!」、はにわみたいな「シェー!!」、社交ダンスみたいな「シェー!!」など、様々な「シェー!!」があります。
皆、楽しそうです。「シェー!!」というポーズの持つ、手足を大きく使った伸び上がるような身体的な動きが、笑い出したくなるような楽しい気分を生み出すのかもしれないとも思いますし、たまたま出会った見知らぬ東洋人の写真家に今までやったこともない変な動きを頼まれる、という非日常性がある種の高揚感を生むのかもしれません。
ただ同時にこうした人々の動きを見ていて、「シェー!!」というある一つの決まった形を真似してやったとしても、自分が属する文化的なモードやこれまで受けて来た教育的なモード、そして個人の身体的な癖などの影響が強く出てくるんだな、とも思いました。皆が同じ形をやっているからこそ、そうした特徴がはっきり見えてくるように思います。
それこそがその人の「個性」というものじゃないかとも思いますし、そうした様々な場所での文化的なモードなどを含む「個性」の現れを「シェー!!」の中に観る、というのがこの本の隠された狙いなのかもしれません。
でもさらに考えれば、この本の中に「そういうことだけを見て楽しんでいれば、それだけでいいのか?」という気持ちも湧き上がって来ます。
ここからはこの本の話ではなくて自分の表現に対する考えの問題になりますが、『自分が属する文化的なモードやこれまで受けて来た教育的なモード、そして個人の身体的な癖などを超えて、本来の「シェー!!」の持っていたような強烈な驚きの感覚ととらわれのない動きの自由こそが目指されなくてはいけないのではないか・・・?』。
「世界のシェー!!」が示す「考えのタネ」が表現上の大事な指針を再確認させてくれました。(Y.O.)