現在、六角舎アートスクールでは、主に国公立大入試に向けての直前講習が始まっていて気が抜けない毎日ですが、今日は午前中、京都国立博物館で開催中の「文化財修理の最先端」展(〜1/31まで)を観に行ってきました。
「文化財修理の最先端」展は、日本の古い書画や仏像、工芸品などに現在行われている保存・修復技術を紹介しつつ、修復された作品を展示するユニークな展覧会です。
一般的にはとっつきにくい学術的なテーマで、そのためか観客は少ないのですが、展示作品は興味深いものが多く、一つの展覧会としても楽しめました。
ただ展示作品は小ぶりなものや細密な仏画が多いので、単眼鏡が役に立ちます。
個人的には俵屋宗達の「蓮池水禽図」を久しぶりにゆっくり観られたのが良かったのと、久隅守景の「四季耕作図屏風」に特に興味を惹かれました。
後者は江戸時代(17世紀)のものですが、この時期に和風の山水表現がすっかり確立していたんだな、と思いました。山の形や川の流れは柔らかく、墨の色も優しくふんわりとしています。ゴツゴツした岩などはなく、緩やかに広がる田んぼの中で人々が働いています。いかにも日本だな〜と思います。
近くで見ると、柔らかい墨や彩色のトーンや筆の運びに加えて、空間的には「間」の多いふわふわした印象の絵なのですが(むしろそういう空間の中で生き生きと働く人々の姿の方が見えてくる)、離れて観てみると、山や川の曲線や墨のトーンが絵画的にしっかり構築され、大らかながらも緊張感のある堅牢な画面を形作っています。「四季耕作図」というテーマから、この絵の主眼はどちらかというと田畑で働く人々の暮らしを描こうとしたのだろうとは思うのですが、久隅守景は狩野探幽の高弟だったとのことで、中国の古い山水画で学んだであろう空間構築力がこのような和の表現の中に確かに感じられるように思えました。
この展覧会は、芸術学や古画の保存修復を志す人に特にオススメしたいと思います。ちなみに高校生とキャンパスメンバーズ加入大学の学生は無料で観ることができます。
図録は(作品図版が小さいものの)会場ではゆっくり読みにくい修復技術に関する解説や図版が収録されており資料価値があります。(Y.O.)