1学期授業でのデッサン・着彩・色彩より


六角舎アートスクールでは7月20日に1学期授業が終了しました。

現在、夏期講習期間の前半が終了したところですが、今回は1学期授業中に制作されたデッサン、着彩、色彩などの課題の中からいくつかをご紹介します。

 


1)1枚目のデッサンは高校三年生の作品で、志望校の近年の傾向に対応して石膏像を二体組み合わせて描いたものです。従来の石膏像一体だけものより、画面構成や石膏像同士の空間的な関係性など、考慮しなければならない要素がグッと増えてきて難度が上がってきます。作者は1学期中は石膏像一体で練習してきて、形態やトーンの正確さや細部の表現など力をつけてきましたが、1学期の最後に頭像ながら二体の組み合わせに挑戦しました。制作に当たっては色々と試行錯誤しながらも粘り強く観察と描写を続け、しっかりとした手応えを感じる充実したデッサンとして仕上げました。これを自信としてこれからも一作ごとに進化を続けていってほしいと思っています。

 

2)2枚目のデッサンも高校三年生の作品です。袋菓子とプラコップの組み合わせですが、作者は画面を大きく使ってモチーフの形を堂々と取り、そしてそれに見合った密度のある描きこみを丹念に施しました。袋の表面の精密な観察と、コロコロと転がっているお菓子のリズム感、そして3種類の素材感の違いなど見どころが多いのですが、何より絵から古典的な風格のようなものすら感じる魅力のあるデッサンになっています。

3)3枚目のデッサンは中学三年生の作品です。タッパウエアは見た目はシンプルですが、描いてみると意外に形が複雑で正確に形を取るのが難しいです。作者は蓋を少しずらすなどしてさらに難度を上げた上でしっかりと形をとっています。また蓋と本体の素材感の違いや、レプリカ洋梨との色や質感の違いの描き分け、4つ切り画用紙の中にバランスよく適切な大きさで描けていることなど、精度の高い作品となっています。


4)着彩作品の1枚目は高校三年生の作品で、1学期の初めの方に描いたものです。作者は着彩写生は春期講習の頃から練習を始めましたが、それから間もなくこのようなレベルの高い作品を描きました。まず鉛筆で丁寧に形をとり、薄いデッサンのように鉛筆でトーンをつけた上で、透明水彩で注意深く彩色していきます。最後に正面にある白い百合の花をどのように空間的に強調すれば良いのかが難問でしたが、不透明水彩を丹念に重ねることで答えを出しました。

 

5)2枚目の着彩作品も別の高校三年生の作品です。この作品でも着彩前のデッサンの段階で時間をかけ、その上で慎重に透明水彩を重ねていきました。その甲斐もあってワイン、鍋つかみ、グレープフルーツそれぞれの質感の違いが描き分けられていると思います。特にワインの肩の丸みとその部分の反射や透過のトーンがうまくいきました。鍋つかみを強い角度で配置したのでその前後感がちゃんと出るか気がかりでしたが、慎重にトーンをコントロールして描き分けました。

6)3枚目の着彩は高校二年生の作品で、アクリルガッシュを使って組みモチーフを描いたものです。いずれ油絵でこうした組みモチーフに取り組んでもらいますが、その前段階として、比較的近いアプローチで取り組めるアクリルガッシュで制作してもらいました。作者はこうした着彩作品は2枚目ですが、前回うまく行かなかったことを踏まえて積極的に絵の具を載せ、描いたり潰したりを繰り返しながら時間をかけて観察し描写しました。最終的にやや形が甘くなってしまった部分はありますが、牛乳缶の複雑な映り込みや反射の状況、薪の物質感、そして背景(壁)のタッチを生かした処理など、非常に手応えのある作品になりました。


7)色彩作品の1枚目は、0から9までの数字からいくつかを使ってベタ塗りで色彩構成するという課題です。基礎的な課題ではありますが、数字の選び方やその組み合わせ、どのように画面に配置するか、また配色はどうするかなど、綺麗な色彩作品として仕上げるためにはかなりの力量が必要な課題です。作者は構成を練り上げた上で明度設計を事前にしっかりして、少ない色数ながら透明感と緊張感のある色彩構成として仕上げました。

8)最後の色彩は中学三年生の作品です。テーマの「遊園地」に対して、型にはまらない自由な発想で、賑やかで楽しい画面を作っています。不思議な形をしたジェットコースターのレールの向こうに見える観覧車や、背後の風景との遠近感を生かした重層的な構成がまず素晴らしいのですが、ジェットコースターがトンネルの中に入っていく際の少年の不安げな表情や、その反対にファンキーな馬(?)の動き、太陽を背にした逆光の色彩表現など、小さな画面(八つ切り画用紙)の中に作者のたくさんの工夫が盛り込まれた充実した作品になっています。


上で紹介した作品以外にも1学期中には、充実したデッサン、着彩、色彩、立体などの作品がたくさん制作されました。


六角舎アートスクールでは、8月の夏期講習が終わると、その後、9月3日(火)より2学期授業が始まります。
 
2学期に入るとすぐに私学の総合選抜入試(体験授業型や面接型)が始まります。国公立や私学の総合選抜入試や推薦入試も間近に迫ってきますし、来年2月の国公立一般入試や美術系高校に照準を定める受験生も試験をリアルに感じつつ年内にできる限り経験量を増やしておきたい時期になってきます。

1学期中はしっかりとした基礎力をつけるために1点あたりの制作時間をやや長くとっても充実した作品を作ることを優先していましたが、2学期以降は入試を見据え、より実践的な練習になっていきます。
 
また、来年度以降に入試を控える1、2年生も夏期講習を経てぐっと力がついてくる時期です。
 
それぞれの受講生が目標に向かってさらに飛躍できるよう、2学期も頑張っていきましょう。(Y.O.)